
大相撲の元横綱・日馬富士による暴行事件から始まった大相撲の問題を、マスメディアが連日報道しています。
加害者の日馬富士、被害者の貴ノ岩、その親方であり日本相撲協会の理事である貴乃花親方(4日解任)、理事長の八角親方などが、主要人物として取り上げられています。
各本人が語っている以上に、マスメディアの憶測が飛び交い、まさに『悪の根源は誰?』的な方向に、報道は進んでいます。
そこに、評議員会の池坊保子議長が加わってきました。
ここで『評議員会』という言葉出てきました。
理事会や評議員会は、日本相撲協会のなかで、どんな役割があるのでしょうか。
「相撲協会の膿みとは何か?」「問題の本質は何なのか?」などの主要な問題はさておき、日本相撲協会の内部の組織についてわかり易く解説してみます。
日本相撲協会とは
日本相撲協会は、1925年に財団法人として設立され、2014年に公益財団法人に移行した組織です。
財団法人と社団法人の違いをわかりやすくいうと、何かを行う目的として集められた財産(お金や土地)を管理し運営するためにつくられた団体が財団法人で、何かを行う目的として集まった人によって運営されていく団体が社団法人です。
一般的な株式会社は、営利社団法人になります。
日本相撲協会は、2006年に施行された『公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律』により、公益財団法人として認定されました。
この認定により日本相撲協会は、税制上の優遇措置を受けることができるようになりました。
公益財団法人として認められるには、民間有識者からなる第三者委員会による公益性の審査を経て、行政庁(内閣府又は都道府県)から公益認定を受けなければなりません。
公益社団・財団法人として認可されると、税制上の優遇措置を受けることができます。
日本相撲協会の定款には、その目的として、
この法人は、太古より五穀豊穣を祈り執り行われた神事(祭事)を起源とし、我が国固有の国技である相撲道の伝統と秩序を維持し継承発展させるために、本場所及び巡業の開催、これを担う人材の育成、相撲道の指導・普及、相撲記録の保存及び活用、国際親善を行うと共に、これらに必要な施設を維持、管理運営し、もって相撲文化の振興と国民の心身の向上に寄与することを目的とする。
と書かれています。
この目的を達成するために日本相撲協会は、以下9つの事業を行うといっています。
(1)本場所及び巡業の開催
(2)相撲道の伝統と秩序を維持するために必要な人材の育成
(3)相撲教習所の維持、管理運営
(4)青少年、学生等に対する相撲道の指導普及
(5)相撲記録の保存及び活用
(6)国技館の維持、管理運営
(7)相撲博物館の維持、管理運営
(8)相撲診療所の維持、管理運営
(9)その他この法人の目的を達成するために必要な事業
上記の目的の実現や事業を推進していくために、相撲協会には理事会というものがあります。
日本相撲協会の理事会とは
日本相撲協会では、役員として理事(10名以上15名以内)をおくことが決められています。 任期は2年です。
その中からトップの理事長を選びます。
理事は、協会員による理事候補選挙によって選出されます。
定款 第48条
「この法人には、協会員として年寄を置く」
年寄というのは、いわゆる『親方』のことです。 現在この年寄名跡(親方株)は、105あります。(他に一代年寄の貴乃花)
まとめると、親方衆が理事を選び、その理事によって運営されるのが理事会です。
ちなみに前回の理事候補選挙では、定数10の理事の椅子を巡って11人が争い、1名が落選しています。
先ほど年寄名跡が105あると書きましたが、そこに一代年寄の貴乃花親方を入れれば、106票を理事選挙で、奪い合うことになります。(現在は空き名跡あり)
単純に考えて、10票あればほぼ間違いなく当選圏内にあるといえます。
現在の理事のメンバーは以下の通りです。
年寄名 | しこ名 | 現役最高位 | 職 務 |
八角信芳 | 北勝海 | 第61代横綱 | 理事長 |
尾車浩一 | 琴風 | 大関 | 事業部長 |
鏡山昇司 | 多賀竜 | 関脇 | 指導普及部長 |
二所ノ関六男 | 若嶋津 | 大関 | 審判部長 |
境川豪章 | 両国 | 小結 | 地方場所部長(福岡) |
春日野清隆 | 栃乃和歌 | 関脇 | 広報部長 |
出羽海昭和 | 小城乃花 | 前頭二枚目 | 地方場所部長(名古屋) |
山響謙司 | 巌雄 | 前頭筆頭 | 教習所長 |
今回、貴乃花理事が解任されましたが、これは臨時の評議員会が開かれ、全会一致で承認されたことによります。
では、評議員会とはどのようなものなのでしょうか。
日本相撲協会の評議員会とは
【スポーツ報知 2018.1.4】
元横綱・日馬富士関の暴行問題で、日本相撲協会は4日、東京・両国国技館で午前11時から臨時評議員会を開き、昨年12月28日の臨時理事会で決議された貴乃花親方(45)=元横綱=の理事解任決議を全会一致で承認した。
臨時理事会で、貴乃花理事の解任決議がなされ、その承認をおこなったのが、評議員会でした。
これは、定款第18条の評議員会の権限にこう書かれているからです。
第18条 評議員会は、次の事項について決議する。
(1)理事及び監事並びに会計監査人の選任又は解任
(2)理事及び監事の報酬等の額
(3)評議員に対する報酬等の支給の基準
(4)貸借対照表及び正味財産増減計算書の承認
(5)定款の変更
(6)残余財産の処分
(7)基本財産の処分又は除外の承認
(8)その他評議員会で決議するものとして法令又はこの定款で定められた事項
評議員は、5名以上7名以内をおくと決められています。(第12条)
理事が年寄(親方)から選ばれるのと違い評議員は、「総数の過半数を外部有識者とする」とあります。 現在の評議員も、3人の親方と4人の外部有識者で構成されています。
公益財団法人では評議員会は理事会の上位に位置付けされているので、最高議決機関であるのですが、今回のように問題がおこらないかぎり、一般的には注目されるような機関ではありません。
評議員会議長・池坊保子氏
日馬富士の貴ノ岩への暴行、貴乃花親方と八角理事長との対立という問題が発生する中で、メディアに登場することが増えた池坊保子議長について、最後にふれておきます。
1942年4月生まれの池坊保子議長は、現在75歳になります。
1996年から2012年まで衆議院議員を5期務めました。
創価学会会員でないにもかかわらず、公明党に所属していたという変わり種でもあります。
池坊という姓からピンとくる人もいるかもしれませんが、池坊はいけばなの流派で、現在の諸流派中では最古で最多の門下を誇っています。
池坊保子議長は、現在の家元である池坊専永氏と1963年に結婚しました。
たぶん多くの人は池坊保子議長のスタンスが、八角理事長よりで、貴乃花親方に厳しいと感じているのではないでしょうか。
「貴ノ岩さんと貴乃花さんが率直に真実を話していただければ、ここまでのことはなかったのではと思うと私は非常に残念です」(『羽鳥慎一モーニングショー』に生出演した際のコメント)
貴乃花親方の理事解任を決議するに至った理事会について「対応に落ち度はなかったっていうふうに思いますけどね」(「直撃LIVEグッディ!」VTR出演でのコメント)
今回、評議員会議長という立場で表に立ち発言することで、少なからずバッシングを受けた池坊保子議長は、
「それはとても傷つきました」
「テレビに出るのは本当にこれが最後」
と言って、マスコミに対する不信感(「ないことないこと過去のことをほじくり出された」)を露わにしています。
いづれにしても、2月に予定されている理事候補選挙の結果を受けて、評議員会では『理事を選任』する責任があります。
貴乃花親方の動向によってはまた、池坊保子議長の言動に注目が集まらざるをえません。